優しい気持ちが育つ種子があるとしたら……

秋のある日…

3歳のおーちゃんに誘われて、お昼寝の見守りをしていたときのこと。

「はなむらさん、セミいないね。」

「そうだねぇ。さむくなったから、セミいなくなったねぇ。」

「でも、ちょうちょや、トンボはいるよね。きょう、おーちゃんはシジミチョウとバッタをつかまえたんだよ。」

「へえ〜。おーちゃん、バッタもつかまえたんだね。」

「すで(素手!?)で、つかまえたんだよ。」難しい言葉を知ってるねぇ!

「はなむらさん、こんどセミをいっしょにみつけようね。」

「みつけようね。こんどセミをみつけるときには、おーちゃん、4さいになってるねぇ。おおきくなったら、いろんなセミがつかまえられるよ。」

「クマゼミもアブラゼミもニイニイゼミもミンミンゼミもクマゼミもツクツクホーシもね。」

おーちゃんは、セミの名前をスラスラと言って、クスッと笑いました。

「はなむらさん!おーちゃんがセミをとってるとき、はなむらさんはなにをしてるかな?」

「おーちゃんが、つかまえたセミを、カゴのなかにいれるでしょ。はなむらさんは、おーちゃんのそばで、カゴをもって、まってるよ。」

「はなむらさん、カゴをもってまっててね。」

おーちゃんは、小さなあくびをしてから、ニッコリして、目をつぶりました。

わたしはおーちゃんをトントンしながら、4歳になったおーちゃんのことを考えていました。おーちゃんは、4歳になったら、新しい保育園に行くことになるなぁ~ってね。

おーちゃんは、きっと、わたしのことを、すっかり忘れてしまうだろうなぁ。でも、わたしはセミを見たら、おーちゃんのことを、きっと思い出すだろうなぁ。

子どもと暮らすことで、わたしのこころの中に小さな幸せの種子が植えられます。その小さな種子を、大切に育てることで、わたしのこころの中に、幸せな気持ちを育てているような気がするのです。